2017年11月17日

臨床実践の現象学会


I. 学会趣旨

 (設立趣意書より)
 「本会は、人々の経験や実践に関心を向け、それを捉え直すことを目指した研究に取り組んでいます。たとえば、日常的に行っている援助やケアと呼ばれる実践、教育に関わる実践、あるいは、病や何らかの困難を抱えつつ生活する 人々の経験などが相当します。これらの実践や経験には、その当事者でさえはっきり自覚していない事柄が内包されており、既存の理論や概念を用いて説明することには限界があります。そのため私たちは、一旦既存の理論や概念を棚上げし、事象そのものへと立ち返ることを要請する現象学を手がかりに、諸経験や実践の成り立ちにアプローチすることを試みてきました。
 本会では主に、研究方法の検討や、現象学を手がかりとした記述的研究などの発表を受け、参加者の皆様とともにじっくり議論を行っています。この議論を通して、発表者は現象学的記述を洗練させ、同時に、参加者の各自が自身の 見方や枠組み、実践の仕方を捉え直し、事象を探究するための視点を養います。」


II. 策定経緯

 研究者は研究活動の遂行において倫理的な態度が必要である。
 本学会が多様な領域からの研究に開かれた場であるために必要な研究者の倫理的な態度や配慮について規定を策定することになった。


III. 研究者に求められる倫理的態度

 本会会員は、人々の経験や実践に関心を向け、 それを捉え直すことを目指す研究者あるいは、研究者であり実践者でもある者として以下に定める倫理規定を遵守する。

 1. 研究者としての社会的責任
  会員は、研究活動が良識に対する社会の信頼と負託の上に成り立つことを認識し、臨床実践とその研究に努めると共に、実践や研究の成果に関して責任を有する。また、研究活動においては常に公衆の安全、健康、福祉を最優先させる。

 2. 研究対象者の保護
  会員は、研究対象者の人権、人格を尊重し、安全、福利、個人情報の保護等に配慮する。

 3. 公平性の確保
  会員は、人種、性、年齢、地位、所属、思想・宗教などによって個人を差別せず、個人の人権と人格を尊重する。また、個人の自由を尊重し、公平に対応する。

 4. 研究者としての研鑽と向上
  会員は、能力と人格の向上に継続的に努める。自らの知識を、豊かな持続的社会の実現に最大限に活用し、臨床実践の探求やその研究を通じて研究者としての品位、信頼および尊敬を維持向上させることに努める。

 5. 公正な活動
  会員は、立案、計画、申請、実施、検証、報告などのすべての実践や研究の過程において、真実に基づき、公正であることを重視し、誠実に行動する.各データの記録保存や厳正な取扱いを徹底し、ねつ造、改ざん、盗用などの不正行為をなさず、加担しない.また、特定の権威・組織・利益によらない中立的・客観的な立場から討議し、責任をもって結論を導き、実行する。

 6. 法令の遵守
  会員は、臨床実践やその研究活動の遂行に際して、社会規範、法令および関係規則を遵守する。

 7. 契約・守秘義務の遵守
  会員は、それぞれの専門職務上、あるいは職務上知りえた情報の機密保持の義務を負う。

 8. 利益相反の開示
  会員は、利益相反がある場合には、説明責任と公明性を重視して、利益相反についての情報を開示する。

 9. 会員相互の協力と尊重
  会員は、他者と互いの能力の向上に向けて協力し、研究上の批判には謙虚に耳を傾け、真摯な態度で討論すると共に、他者の知的成果などの業績を正当に評価する。


IV. 発表に必要な手続き
 
 i. 人々の経験を探求する実践報告・人を対象とする研究計画・研究結果等を本学会の研究会、学術大会および学会誌で発表する場合、研究機関に所属する研究者は、原則各施設の規則に従い、あらかじめその研究について倫理委員会の承認を得なければならない。本学会には倫理委員会はない。
 
 ii. 現在研究機関に所属しない研究者で、専門職者のうち職能団体や所属する専門領域に研究倫理委員会がある場合、また過去の所属施設で得られたデータを扱う場合は、その所属施設や団体の倫理委員会の承認を得なければならない。
 
 iii. 現在および過去においても組織団体・施設に所属せず、人を対象とする実践報告や研究を、本学会および研究会で発表をしようとする研究者は、倫理的配慮について、後述する「A)研究の説明と参加協力の意思確認(イン  フォームド・コンセント)」あるいは「B)研究対象者本人にインフォームド・コンセントを得ることが困難な場合」に示すように対象者の理解と同意を得なければならない。
 また発表に際しては個人が特定されないよう対象者とその家族や関係者に及ぶ影響も配慮し、秘匿性の確保につとめなければならない。対象者が断れない状況、あるいは理解が不十分な状況で研究協力を依頼していないか留意し、そうした状況が疑われる場合は配慮をしなければならない。
 
 iv. 発表に際しては倫理委員会の承認について資料に明記しなければならない。研究機関に所属しないものは倫理的配慮の詳細を発表資料に明記しなければならない。
 
 v. 倫理的配慮と研究発表の責任は発表する研究者にあるが、本学会倫理規定にもとづき、倫理的配慮やその記載が不十分であると事前に本学会事務局会議で判断された場合、本学会・研究会での発表は不可となる。研究者はこの決定に従わなければならない。

 
  A) 研究の説明と参加協力の意思確認(インフォームド・コンセント)
 
 
 研究者は原則、研究対象者となるべき者に対して、あらかじめ次の事項について文書により説明し、十分な理解を得た上で、対象者となることについて文書により同意(インフォームド・コンセント)を得なければならない。
  
  ⑴ 研究への参加は任意であること。
  ⑵ 研究への参加に同意しない、あるいは同意した後に拒否をした場合にも研究者やから不利益を受けないこと。
  ⑶ 実践・研究中は常に参加や拒否の意思を表明できること、同意はいつでも撤回できること。
  ⑷ 対象者に選定された理由。
  ⑸ 当該研究の意義、目的および方法、研究計画が終了するまでの期間ならびに対象者が参加を要する期間、頻度および1回の参加に要する時間、研究者の氏名および職名。
  ⑹ 当該研究に参加することによる、研究対象者自身にとっての利益ならびに起こりうる危害、不快な状態およびそれらへの対応について。
  ⑺ 対象者を特定できないよう配慮した上で、研究の成果が公表される可能性があること。
  ⑻ 当該研究の資金源、起こり得る利害の衝突および研究者と関連組織との関わり。
  ⑼ 得られたデータは、誰が、どのように匿名化・秘匿化するのか(しないのなら、その根拠)。またそのデータは、誰に、どこで、どのようにして目に触れるのか。データの保存および使用の方法ならびに保存期間。参加拒否したあとのデータの取り扱いについて。
  ⑽ 当該研究についての問い合わせ先および苦情等の窓口の連絡先。
  ⑾ 当該研究は、どこの審査を受け、誰の許可を得て実施するのか。
  ⑿ その他必要な事項。

 
  B) 研究対象者本人にインフォームド・コンセントを得ることが困難な場合
 

 研究対象者となるべき者が同意能力を欠く場合等、インフォームド・コンセントを得ることが困難であるときは、前項の規定を遵守したうえで、「代諾者」となるべき者のインフォームド・コンセントを得ることにより、対象者となるべき者が研究に参加する意思があることとみなす。この場合において、代諾者となるべき者は、対象者となるべき者と良好な関係にある、適正な判断力を有するなど、対象者となるべき者の最善の利益を図り得る者でなくてはならない。
 研究責任者は、対象者となるべき者が研究者に対して不利な立場にある場合には、自由意思によって同意または不同意を決めることができるよう、配慮をしなければならない。

 

以上